ひびつなぎのうた

日々楽あり苦あり

回復する傷 〜薬疹体験記〜

Prolog

薬疹の時、ネット上の薬疹体験記を見てとても参考になったので、私も自分の薬疹の経験を体験記として綴ろうと思います。もし、この体験記が誰かしらの糧になれば幸いです。
薬疹の症状の画像もあるので、耐性がない方は閲覧注意です。
それではどうぞ。



原因となった薬を服用する迄


喉の痛みで耳鼻科に通い、薬を処方してもらったせいか喉の痛みは完治しました。
しかしそれと入れ替わるように、その日から咳がでるようになりました。
ゴホンと咳をすると、胸がぐっと押されるような、重い咳です。
そのうち治まるだろう、とたかをくくっていましたが、一週間以上続くので、肺炎になることをおそれて内科を受診しました。


血液検査の後、これはマイコプラズマ感染症であるという診断がくだされました。
今現在(2011年秋)流行の病であるそうで、どこかで菌をもらったのだろうと言われました。


どうりでずっとよくならない筈だ。よかった、進行したらマイコプラズマ肺炎になってしまうところだった。


これを治すには、抗生物質による治療が効果的とされ、薬を出されました。

一日一回、昼食後に服用するように言われました。


「よかった、これで治るんだ…」


重い咳から解放される安心感からほっと胸を撫で下ろしました。この救世主であるはずの薬によって後に苦しい思いをするなどとは、この時は露ほども想像していませんでした。



薬の服用〜薬疹の発症


病院は午前中に受診したので、その帰りに母と昼食を摂り、そののちジェニナック錠200mgを一度目の服用。
一回二錠の規定をしっかり守り、多くの水と共に流し込みました。
その日は特に変化なし。


翌日朝、何の変化もありませんでした。ただ気持ち、咳が治まったように感じました。
昼食後に二度目のジェニナック錠200mgの服用。


病気なのだから、安静にしているべきだと思ったのですが、その日は、飼い犬が脱走してしまうというハプニングがあり、町内を駆けずり回りました。
5時間の捜索の後、飼い犬は無事に見つかりました。


精神的な不安と5時間もの捜索で体はクタクタになりました。
その日は夕飯の時、やめとけばいいのに、犬が見つかった安心から、飲酒をしてしまいました。
ビールを二缶、いただきものの麦焼酎ロックを三杯以上。
それはもう、上機嫌です。


酔っ払ってほとんど記憶がないのですが、トイレに行った時、手首がものすごく痒かった記憶があります。
酔っているので視界もぼやけていたのですが、少し赤くなっているような記憶がうっすらあります。


「なんだろう?飲み過ぎで体温でも上がったかな?・・・まぁいいか、寝よう。」


上機嫌でベッドに入ると、その日は寝てしまいました。




・・・・・・・・・・・




翌朝、お酒が抜けやすい私は二日酔いの気配もないさわやかな朝を迎えました。
天井をぼーっと見て、体が起きるのを待っていたところ、ふと違和感に気づきました。


「腕に発疹がある・・・?」


例えるなら、蚊が血をすってる最中に殺してしまって、かゆみ成分がたっぷり残った蚊に刺されのようなぷっくりした発疹が、腕にたっぷりできているのです。


「なにこれ・・・もしかして、まだ酔ってるのかな?」


体の全体を見ると、腕以上に足にもたっぷりその発疹が出ています。私は何が起きたか把握できず、急いでリビングに行きました。


「おかん!なんかたいへんなことになってんだけど・・・!」


「え?」


母に体にできたたくさんの発疹を見せると、驚いていました。


「すぐに病院に行こう!」


その日は土曜日で、マイコプラズマの診断を下した病院が午前中診察していたので急いで病院へ向かいました。



内科での診察と治療


こんな経験は今まで一度だってありませんでした。
軽い金属アレルギーはありますが、食べ物や薬にアレルギーが出たことは一度だってありません。
そばアレルギーで死にそうになることがある、という話に、そんなこともあるのだなぁと想像もできないほど、私の人生は口に入れるもののアレルギーとは無縁だったのです。



発症当日の写真。まだ痒みはなく、熱も持っていない。(待合室にて撮影)


一体これはなんなんだ?


私は肌に自信がありました。色白で、つややかで、たくさんの人にほめられる肌は、私の自慢でした。
ニキビもほとんどできないし、荒れることもない肌を誇りに思い、肌のトラブルとは無縁だと思って今日まで生きていました。
その肌が、発疹だらけになっている。


なんだか、着ぐるみをきているようだと思いました。
自分の精神と体がピタリと合っている感じがせず、チグハグ。
まるで他人のベッドで寝ている時のような、安心しきれない心地の悪さ。
コスプレでもしているような気分。


恋人にiPhoneのメッセ昨日で写真を添付して送ると、すかさず電話がかかって来ました。驚いたみたいです。ひどく焦っていました。


「大丈夫なの?かゆいの?痛いの?」


次々に浴びせられる症状についての質問で、ああ、これは私の体に起きてることなのだな、とようやく理解してきました。
すんなり飲み込むにはあまりにもフィクションのような体の変化。
でもこれは実際に私の体で起きているハプニングなのだ。


「大丈夫。多分。とりあえずきちんと看てもらうね。」



・・・・・・・・・・



先生は、腕と胸と背中だけをちらっとみて、結構でてるね、と言いました。


「薬の影響か、マイコプラズマによる発疹かは、現段階では断定できない。とりあえずジェニナック錠はやめてもらって、代わりに違う薬を出します。ジェニナック錠よりも弱い抗生物質です。他の薬はとりあえず飲み続けてくださいね。それとは別に発疹を抑える薬も出します。飲み薬とぬり薬です。それで様子を見てください。」


「こんな状態になっているんですけど、点滴で抑えることはしなくて大丈夫なんですか?」


母が質問しました。


「うーん、大丈夫でしょう。とりあえず、ジェニナックをやめてみてね。」




・・・なんだか腑に落ちない診察でした。


その日の昼食後は代わりに出された薬を飲みました。
痒みが出てきた膝と腕の内側には薬も塗りました。
ベッドに安静にしていると、体が熱くなって来ました。
運動のあとのような、体の中から熱が放出されているような発熱。息も重い。
体の中でも特に顔と唇がどんどん熱を持って、腫れて行きました。
唇は、唇の外枠を縁取るように赤い発疹が出て、1.3倍位の大きさに腫れ上がっています。
唇の口内にも発疹ができているため、コップがうまくつかえませんでした。


怖くなって医者に電話すると、すぐ来るように言われました。


午前診てもらった先生とは違う先生にじっくり診察してもらいました。
そこでもその発疹の原因はわかりませんでしたが、体温上昇と呼吸が重いという症状が危ないということで、痒み止めの注射とステロイドの点滴を受けることとなりました。


ベテランそうな、すこしおしゃべりがうるさい看護婦さんに処置してもらいました。


「なんでそうなっちゃったの?」「いつから?」「だるいの?」


人と話すような気分でもなかったし、それらの質問はどちらかというと私自身が一番したいのよ、と憂鬱になりながらも、サーヴィスのような笑顔でその質問を受け流しました。
緊急外来で来るほど辛いのだから察してほしいのだけれども。


とくに発疹を見て、うわーひどいねえ。と言われたのには、空笑いで応えるしかありませんでした。
彼女に悪気がないのはわかりますが、嫌な気持ちになりました。
私だってなりたくてなってるわけでもないのに、好奇の目なんかにさらされたくないのに。


医療に携わるもののモラルってどうなってんのかなぁ、と怒りが湧いて来ましたが、でもそれ以上に今の症状をどうにかしてほしい気持ちでいっぱいだったので、目を閉じて、眠いふりをしました。


ぴっちりした長袖を着ていたため、手の甲から点滴を打たれました。冷たい薬剤が、体の中をすうっと通り抜けてゆく感覚がしました。
薬が体に入っていくにつれ、息が軽くなってゆく。


点滴後、発疹に変化はありませんでしたが、体が熱い感覚と、息が重い感覚は解消されました。
先生が、アナフィラキシーになったらまずいので、息が重くなったり、体がおかしいと感じたらすぐに病院にくるように言いました。


帰りの車の中で、私は苛立ちを感じました。
やっぱり午前中、あんなあっさりした診断ではいけなかったんではないか?
先生の専門外であるなら、べつの医師を紹介なりなんなり、してくれればよかったではないか。


咳はすっかりよくなっていました。しかし、代わりに体中には見るも無残な薬疹だらけです。
唇の腫れはだいぶ善くなっていましたが、それでも大きさは普段より大きいです。


外に出ることが恥ずかしいと感じました。
さっきの看護婦のような好奇の目に晒され、異型を見るような瞳に出会うのは嫌です。


その頃には体と心はぴったり合わさっていました。
自分の体に起きていることだと、理解していました。
心と体が合致することによって、不安が襲って来ました。


これは治るのかしら?
一生このままだったらどうしよう?
こんな体じゃ、もう恋人にも会えない。恥ずかしくて、会えない。
恋人はきっと、気持ち悪いと思うだろう。
このままの体になったら、一生抱いてもらえないのではないだろうか。
気持ち悪いと、捨てられてしまうかしら?


ベッドの中で、そんなことをグルグルと考えました。


全身鏡の前に裸で立つと、ぞっとしました。
体中に広がる発疹。
数えることもできないたくさんの数。
これらはちゃんとひとつ残らず消えてくれるのだろうか。
痕になったらどうしよう。


現実であることを飲み込んだら、不安ばかりのしかかって来ました。
もう、眠ってしまおうと思いました。
意識がはっきりしてるのは、辛い。


部屋を真っ暗にして、布団をかぶって眠りました。
安心は、夢のなかにだけ、存在していました。


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2014年9月追記

放置している間にたくさんのコメント、ありがとうございます。
自分以外にも薬疹の症状が出ている方がいらっしゃるのですね。。。
心中お察ししします。
回復までの記事を簡潔に追記したいと思います。

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回復する傷

安心な夢の中なのに
眠っているはずなのに、横になっているのに、
だんだん心臓の音が大きくなっていきました。

どき。どき。どき。どき。

音は大きく加速していき、それにともなって呼吸が苦しくなってきました。

(なんだろうこれ?)

時間は夜の22時頃だったと記憶している。
高鳴る鼓動と呼吸の苦しさ。
たまらず階下の両親を呼びました。

(もしかして、アナフィラキシーかもしれない・・・)

いそいで市民病院の夜間窓口へ。
処置を受けるまでの待ち時間トイレで自分の姿を鏡で見てぎょっとした。

顔は腫れ上がり、真っ赤。
全身の薬疹は赤々と存在を増し、関節の部分は赤くにじんでいる。
唇は粘膜だからか、ぷっくりと腫れ上がって明太子のよう。

「なにこれ・・・妖怪?」

あまりの変わり果てた姿に逆に可笑しさを感じた。
もう自分を自分だと認識することもできなくなってきたのか?
いや、息苦しさでそれどころではなかったのだ。

名前を呼ばれ処置室へ。
すぐさま点滴を打つことになった。

点滴が入っていく。血管がすずしい。体が全部熱いから、点滴の冷たさがよくわかる。
点滴に伴って、どんどん呼吸が楽になって、鼓動も治まってきた。
そこから安心して、私は眠ってしまったらしい。

「大丈夫?立てる?」

看護師の声にはっと目が覚めた。
2時間くらい点滴を打っていたみたい。

先生のもとへ通されると、薬疹の診断が出た。
原因の薬は飲まず、体内の薬を出し切るのが大切とのこと。

「どうもありがとうございました。」

両親とともに病院を出た。
無事で良かったね、と母は笑った。
こういうときに自分以上に苦しい顔をしてくれるのは肉親だけかもしれないな。



翌日から、とにかく水分摂取につとめた。
とりわけ解毒効果があるというドクダミ茶とそば茶を大量に作り、飲み続けた。

そば茶徳用1kg

そば茶徳用1kg

たくさん飲んで、たくさんトイレに行く。
へとへとになるし、膀胱にもあまりよくないかもしれないけど、
目下の薬疹を鎮火させるのがなにより大切だ。

その甲斐あってか、日に日に薬疹は薄くなってきた。
夜は副交感神経が優位に立つせいか、薬疹が濃くなったりすこし息苦しさがあったが、
それも日が経つにつれてなくなっていった。

そして、一週間後の腕がこうである。

一週間前の

に比べてかなり良くなった。
そして3週間後には薬疹があったこともわからないくらいに綺麗に。


薬疹はあとにはのこらないので大丈夫です。
ただ、かゆみの侭にかきむしるとどうなるかはわからないです。
私は皮膚科に行ってかゆみ止めだけ処方してもらいました。
(そこの皮膚科の対応はすごく嫌だったので割愛します)

以上の経験から、薬疹が出た場合は、

1、原因となる薬を即座やめる
2、その薬を出した医者に相談
3、医者の指導のもと処置(かゆみ等も我慢できないならこのとき訴えるべきかも)
4、お薬手帳等に禁忌薬として記入 家族に禁忌薬の名前を教えておく
5、医者にかかる度にカルテのアレルギー欄に禁忌薬名を記入。先生に口頭でも伝える

といった行動をとるのがいいかなと思います。
特に1は必須です。
すこし変だな、粘膜がはれてるな、ぐらいでも絶対にやめた方がいいです。
薬のアレルギーは一度目より二度目、二度目より三度目の症状の方がひどいからです。

約三年経過していますが、5は絶対に欠かさないです。
薬のアレルギー再発はもう御免なので・・・。

以上、簡単ですが忘備録として。
誰かのお役に立てたら幸いでございます。

特に今現在薬疹で苦しんでいる方のお力添えになれたら、と思います。

グライド/リリィシュシュ

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